くらす和晒 エッセイNo.3 「撫子集う、再会の日に。」
8月の終わりのこと。
高校の同窓会のお知らせのハガキが届いた。
卒業して三年くらいは、帰省して出席していたけれど、四年目からの出席は遠慮させてもらっていた。
私の母校は、地元で三番目の進学校で女子高だった。
短大が併設されていることもあり、クラスの半分以上はそのままエスカレーター式に進学。
それ以外の人間の外部の大学受験は、一握り。
私は、そのうちの一握りだった。
最初は、久しぶりに逢うクラスメイトとの再会を楽しみにしていた。
特に仲の良かった友達には、流行りのスイーツなんかを手土産にして。
有り難う、TVで見て食べてみたかったんだよね、と言われたときは嬉しかった。
三年目の同窓会にも雑誌で良く取り上げられていたスイーツを用意して。
同じ高校で、同じ空間で、泣いたり笑ったり、過ごした中で出来た絆。
卒業しても、友達は、友達。
頻繁に会うことは出来ないけれど、近況報告はしていたつもりだった。
けれど、人は、変わる。
「都会風吹かせちゃって。」
三回目の同窓会の居酒屋のパウダールームから偶然聞こえた女性の声。
それは、親友だった裕美子が人の悪口を言う時の声で。
三年間、同じクラスで同じ部活で一番側にいた親友の本音は、胸にグサッと傷をつけた。
私は、聞こえてしまった親友の本音を胸に仕舞い、この時間が早く過ぎることだけを願っていた。
裕美子は、何事もなかったようにテーブルに戻り、私に笑顔で話しかけてくる。
本当は、こそこそと悪口を言っていたくせにとモヤモヤしながら、それでも私も笑っていたのは、その場所にいた地元に残っていたクラスメイトが、みんな裕美子のように私を余所者のように想っているんじゃなかと考えたから。
時間をかけて帰省して同窓会に参加したことを後悔しながら、もう、同窓会に出席するのはやめようと帰りの電車の中で決めたんだ。
大人になってみれば、環境が変れば人付き合いだって変るし、その時のそれぞれの立場での想いだってあるってわかる。
裕美子の言った『都会風』それは今なら認める。
久しぶりに友達に会うんだからって、雑誌で見たブランドの洋服も靴もバッグも新調し、少し高い美容室で髪を切った。
自分では絶対高くて買えないスイーツをお土産に選んだのも「すごい」って言われたくて。
一か月分のバイト代は消えたけれど、それでも見栄を張りたかったんだ。
いつもならすぐに捨ててしまう同窓会のハガキを捨てなかったのは、いろんなことが落ち着いて、懐かしさが芽生えたからなんだろう。
息子たちが就職して、私の手から離れて。
仕事は忙しいけれど、育てた後輩たちにメインの立場を任せてサポートに回り。
無理な友達づきあいはやめて、気が合う友達とだけ会うようになって。
今の自分なら、同窓会も楽しめるんじゃないかと考えた。
九月とはいえ、まだ日中はまだ暑い。
和晒のカレンシャツをメインにコーディネートすることに決めた。
山吹色に近いイエローのカレンシャツは、Vネックで首元がすっきり見える。
汗をかいてもさらっとしているし、なんといっても着ていて気持ちがいい。
ブラックの細身のスキニーとシルバーのオープントゥパンプスでIラインのシルエットを作って。
アクセサリーは、ランバンのカラフルなビーズのロングネックレス。
バッグはプラダのパデッドのミディアムサイズの黒のトートバッグに。
そして今回もお土産は、流行りのスイーツで、と、想ったけれど、やめた。
今回は、東京土産で絶対一度は食べたことがある「東京ばな奈」
東京駅限定のパッケージだからお孫さんがいる旧友にはウケもいいかも。
年齢を重ねて、自分の自分らしさを表に出して。
気持ちのいい服を着て、背筋を伸ばして歩いて。
今の自分、いいんじゃないの?って自分自身に問いかける。
あの頃のクラスメイトたちもそれぞれに人生を歩いていろんな困難を乗り越えたはずだ。
大人になった私たちだからこそ、ただただあの頃の話を楽しむ日があってもいい。
誰くんのママや、誰さんの奥さんじゃなく、名前を呼び合う。
ほんの数時間、夢だけ見ていたあの頃に戻って。
幸せに生きる今だからこそ、胸を張って。
和晒のカレンシャツ 一覧はこちら
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